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長編 それぞれの道 9

2008年11月22日 00:48

その頃浜田は1軒店を押さえる為に動き出していた。
この不況の折、思うように売り上げが伸びずに閉店を考えているオーナーも少なくない。
しかし、一番の問題は金だ。
物件探しから工事まで自己資金で始める個人店より、ノウハウが出来ている
フランチャイズの方が良いに決まっている。
その分保証金その他がかさむのだ。
泉や浜田はそう簡単に金融機関から借り入れる事は難しい。
「金持ちの親戚でもいればいいんだけどなぁ」
一番無難な線で雇われ店長だが・・いまいち上手い方法が見つからない。
上司にも相談してみたがせめて保証金の半分は自己資金でないと
会社の審査は通らないと断言された。
「せっかく泉がやる気になってんのに何だよ。」

浜田の苦労も知らずに泉は阿部と三橋の三人で国内旅行に出掛けていた。


日曜日の夕方小旅行から戻った3人は居間でごろごろと寛いでいた。
メールをしようと阿部のパソコンを立ち上げた泉が息を呑んだ。
「阿部これ見てよ。」
三橋の膝枕でソファーに寝そべっていた阿部が立ち上がる。
泉の後ろから画面を覗き込んだ阿部も声を上げた。
「マジかよこれっ・・」

トップニュース扱いだ。

  スクープ!!榛名元希投手深夜の密会!!お相手は年上美人女優?

「かおりさんだ・・」 阿部が呟く。
隣に立った三橋が眼を丸くしている。「あ・・のかおり・・さん・なの?」
訳のわからない泉に説明する。
女優の森本香織は榛名の恋人であること、そして当時は人妻であった事。
「不倫か・・良くないよな。」泉が言う。事情は解らないがどちらにもスキャンダル決定だ。

「離婚調停が進んでいれば不倫じゃないかもしれないぞ。」
あれからずいぶん経つのだ。バイトでホストクラブで働いて・・
「えええええ・・・?阿部がホストぉ?」

途端に不機嫌になった阿部を誰が責められようか。
「てめぇ花井と同じこと言うのかよぉ?オレは月50万稼いでたんだけどな!
文句あるか?あぁ?」

「文句は・ないけど・そこで・浮気・したでしょ」
ああ忘れていた。最強のオレの三橋がいたんだっけ。「いや・・それは。」
思わず下を向いて言い訳を探してしまう阿部に泉はニヤついている。
「最低ーー阿部。浜田よりサイテーあいつは未遂だったけどお前は弁解の余地なし!」

「オレの話はいいんだよ!それより榛名さんはどうするんだろう。
シーズンも始まってるし、なんかこの時期に出るあたり作為的だよな。」
名前も出ていないし写真も暗くて女性の顔は特定できない。
ーー別の人ってことはないだろうな・・
それに彼女はあの時、訴訟に勝つまでは気をつけると言っていたはずなのに。
しばらくその暗い写真を眺めていた阿部だった。

「浜田にメールするんだろ。あの人達はそういうリスクも踏まえて付き合ってるって聞いた。
榛名さんが何とかすると思うよ。いい加減に付き合ってるって感じじゃなかったしさ。」

とにかく自分の先輩がこんな週刊誌にスッパ抜かれていい気分ではない。
俺様で口が悪くてワガママだけど・・いい投手だよあの人。


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